(以下、転載です)
『チェルノブイリ原発事故・終わりなき人体汚染』(NHK・1996年放映)が伝える大事なこと
福島事故が「レベル7」と発表された後、4月13日に仲間たちにこう書きました。
もうレベル7となった以上、危機意識を喚起する必要はないと願いたい。しかし今度は、福島がチェルノブイリと比べいかに軽度かと 強調し、そしてチェルノブイリの被害自体の過小評価の傾向がエスカレートしているようだ。/ そんな暇があったら放射線のリスクや、核発電の危険さや愚かさ、核発電から脱却する新しいエネルギーのあり方を学ぼう。/ 孫崎亨さんのツイッター「マスコミの信用度:今なすべきはレベル7が如何なる危険性を持つかの説明。しかし一斉に危険度低い印象で報道。これ何。朝日: チェルノブイリと全く異なる、読売:チェルノブイリとは異なる、:毎日:チェルノブイリ級ではない、日経:チェルノブイリ全く異なる。こういうのを談合報 道とでも言うか。」/ – 私(Satoko)は日本時間12日夜11時50分にやったNHK「持論公論」を見ていました。(カナダ西海岸のテレビジャパン。日本の放映時間と一緒 だったかは未確認)/私が昨日ここで紹介したNHKの以前のチェルノブイリ・福島の比較よりはずっとましでした。http://p.tl/168G 福島は放射線量ではチェルノブイリの10%程度とされながらも、チェルノブイリでは10日程度である程度おさまったこと、問題になった原子炉が1つしかな く福島のような同時多発事故ではなかったこと。福島ではチェルノブイリにはなかった汚染水による海洋汚染があったこと。/ しかし驚いたのは、チェルノブイリの人的被害で、被ばくした作業員29名の死亡のことを言ったあと、他の被害についてほとんど触れなかったこと。/過小評 価の批判があるチェルノブイリ・フォーラムでさえ小児甲状腺ガンを4000人、ガン死数も約4000としている。2006年のWHO報告ではガン死 9000人。京大の今中哲二の論文参照http://p.tl/3b3e%20/ 2006キエフ会議では3-6万人、2006年のグリーンピースは9万23千。2010のニューヨークアカデミーオブサイエンス出版の研究では100万人近い。http://p.tl/3QoB / NHK「持論公論」はこういったガンによる被害者については一切言及なし。ああ、これからは日本のメディアもチェルノブイリの被害を過小化する時代が来る のだと思った。NHKは広島長崎から劣化ウラン、核実験、第五福竜丸事件まで、非常に先進的な特別番組を作ってきていて尊敬してきた。/ 『チェルノブイリ原発事故・終わりなき人体汚染(1996)』や、『汚された大地でーチェルノブイリ20年後の真実』(2006)だ。数々の調査研究をも とに、WHOやIAEAの報告の過小評価を追及する姿勢もあった。今後、チェルノブイリの真実が日本政府や電力会社に都合が悪くなったからといって急にこ ういった番組を作るのをやめたり、知っているはずのチェルノブイリの被害を言わなかったりすることはないと信じて期待している。被ばく国、日本のメディア の真価が問われている。
http://peacephilosophy.blogspot.com/2011/04/blog-post_25.html
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「プルサーマル3号機の核爆発」「ウラン・プルトニウムの検出」「アルファ線・中性子線の検出」「ガレキ受け入れ」「都市濃縮」
チェルノブイリ事故と違い、首都圏はアルファ線・ベータ線汚染により、チェルノブイリ事故の影響よりも早い展開で、被曝被害が進行しています。
今まで、避難に躊躇していた子育て家庭も、チェルノブイリから学び、西日本への子どもの避難を進めてください。
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(以下転載です)
終わりなき人体汚染
【チェルノブイリ原発4号炉】
10年前の今日、チェルノブイリ原発4号炉の爆発事故によって、人類史上最悪の放射能汚染が引き起こされました。30万人以上の人々が家を失い、今も700万人以上の人々が、汚染された大地に暮らしています。
事故直後、コンクリートによって封じ込められた4号炉は、いまだに強い放射線を出し続けています。
放射能は、人々から大地と家を奪い続けています。おびただしい量の死の灰は広大な地域に降り積もり、人が住むことの出来ない汚染大地を作り出しました。
事故がもたらした人体への影響は、10年という歳月を経て、風化するどころか、逆に深刻さを増しています。

長い潜伏期間を経て、がんや白血病などが急激に増加しています。
そして、放射能の影響は、脳にまで及んでいることが解ってきました。被曝者の身体の中で、何が起きているのか。
世界中の科学者達が詳しい調査や分析を続けてきました。
その結果、新しい事実が次々と明らかになってきました。チェルノブイリ原発事故による放射能人体汚染は、10年という時を経て、私たちの前に想像を遥かに超える姿を見せ始めたのです。
【終わりなき人体汚染 ~チェルノブイリ事故から10年~】
10年前、チェルノブイリ原発事故で被曝し、避難してきた人々の間に、また悲劇が起きました。
1人の幼い命が失われたのです。少女は、事故当時3歳でした。4ヶ月前、背中に小さなこぶが出来、手術を受けましたが、その後再発。見る見る病状は悪化し、がんで亡くなりました。
5000人余りの避難民が暮らすこの地区で、毎週のように人々が亡くなっています。
少女の死は、チェルノブイリ原発事故の呪縛から今も逃れられない現実を、改めて見せ付けたのです。
1986年4月26日未明、チェルノブイリ原子力発電所4号炉が突然爆発、炎上しました。
広島型原爆500個以上の放射性物質が放出され、原発周辺は強烈な放射能に包み込まれました。
【プリピャチ】
放射能が最初に襲った街は、原発からわずか3キロのプリピャチでした。

しかし、事故が起きたことは市民には伝えられず、人々はいつもと変わらぬ朝を迎えていました。事故当日のプリピャチの映像です。
画面の一部が時々白く光るのは、強烈な放射線でフィルムが感光しているためです。
チェルノブイリから放出された、セシウム137などの放射性物質は、上空1500メートルまで舞い上がり、ヨーロッパをはじめ、世界中に広がりました。
原発から半径600キロの汚染は深刻で、その面積は12万平方キロ、日本の国土の1/3近くにも達します。黄色から濃い赤になるほど汚染のレベルが高いことを示します。

一番濃い赤の地域は、東京のレベルの40倍以上にも達しています。最も汚染の少ない黄色の地域でも、日本の基準では立ち入り禁止区域に相当します。
WHO・世界保健機関の調査によると、いまだに780万人の人々が、この汚染地域で生活し、放射線を浴び続けています。広島や長崎では、人々は一瞬のうちに大量に被曝しました。

しかし、チェルノブイリでは、住民が長期間にわたって少しずつ放射線を浴び続けているのです。
住民は、放射能が降り積もった大地から、直接放射線を浴びています。さらに、汚染された空気や水、そして食べ物が体内に入ることによって、身体の中からも被曝しています。

住民は、この10年間、2つの被曝を同時に受け続けてきたのです。
チェルノブイリの放射能による、人体への影響はどのように考えられてきたのか。
【IAEA チェルノブイリ調査報告書(1991年)】
こ れは、事故から5年後、IAEA・国際原子力機関がまとめた報告書です。 当時の住民の健康状態を調査した結果、放射能が直接に影響したと考えられる健康被害は認められないと結論づけています。そして、今後起こりうる住民の健康 被害については、将来、がんまたは遺伝的影響による増加があったとしても、自然の増加と見分けることは困難であろうと予測しています。
【ウクライナ共和国 キエフ市】
しかし、IAEAの予測に反して、その後深刻な事態が次々と起き始めました。
異変は、まず子供たちに起きました。
この少女は、小児甲状腺がんの治療を受けています。
本来、100万人に1人か2人しかかからないという、小児甲状腺がんが、子供たちを中心に急激に増加し始めたのです。
甲状腺は、身体や脳の発達に不可欠な、甲状腺ホルモンを作る重要な器官です。
チェルノブイリ事故により放出された放射性物質の一つ、ヨウ素131は、体内に入ると甲状腺に蓄積しやすく、がんを引き起こします。
その結果、甲状腺ホルモンの分泌異常が起き、成長期の子供の身体や脳の発達が遅れてしまう恐れがあります。
この少女は、事故当時4歳でした。
チェルノブイリ型の甲状腺がんは、通常のタイプに比べて進行が早く、転移しやすい特徴があります。このため、発見され次第、ただちに手術しなければなりません。
この少女の甲状腺にも、がんの黒い影が発見されました。
【キエフ内分泌代謝研究所 ミコラ・トロンコ所長】
「最 初に子供たちに甲状腺がんが増え始めた時は、私も正直言って放射能の影響と言えるかどうか、半信半疑でした。しかしその後、汚染の高い地域ほど患者が多 く、しかもがんのタイプが通常のものと違うことから、放射能の影響に間違いないと確信しました。これから更に、患者は増えていくと予想しています」
【ウクライナ・ベラルーシ・ロシア西部の小児甲状腺がん発生率】
WHO・世界保健機関の調査によると、小児甲状腺がんは、事故から4年後の1990年から急激に増え続けています。
【キエフ小児産婦人科研究所】
最近、汚染地域に住む妊婦たちの身体に、様々な異変が起きていることがわかってきました。
キエフ小児産婦人科研究所では、事故直後から、汚染地域に住む妊婦2万以上について、出産に関する詳しい調査を続けてきました。
その結果、汚染地域の妊婦の貧血が事故前に比べて10倍に増えたほか、死産や早産が多く発生していることがわかりました。
出産異常の原因を、更に詳しく分析してみると、子宮内の出血や、早すぎる破水などが増える傾向にあり、主に母体の異常が、死産や早産を引き起こしていることがわかりました。
妊娠5ヶ月のこの女性は、事故当時11歳でした。これまでに一度死産を経験しているため、不安を感じてこの研究所に検査を受けにやってきたのです。
「胎盤が厚くなりすぎています。胎児に酸素不足の兆候がありますね」
【胎児】
胎盤は、胎児に酸素や栄養を供給する、重要な役割を果たしています。
胎盤は、通常この時期であれば、2センチほどの厚みですが、この妊婦の場合、5センチ以上に肥大しています。これは、子宮内の酸素が不足していることを示し、このままでは胎児の成長に深刻な影響が出る恐れがあります。
画面右側が胎児の頭です。この胎児の頭の直径は4センチほどしかなく、通常の胎児に比べて成長が遅れていることがわかりました。この研究所では、こうした妊娠中の異常は、汚染地域の妊婦によく見られると指摘しています。
【キエフ小児産婦人科研究所 ダシケビッチ産婦人科部長】
「深刻な状況です。かつてのIAEAの予測と大きく食い違ってきています。私はその原因は、長期間の被曝のためだと思います。」
「今後、長期的な被曝の影響を注意深く調査していかなければいけないと思います。また、妊婦や新生児に染色体の異常も見られるので、今後世代を超えた遺伝的な影響が出てくるかもしれません」
汚染地域では、事故後、人口中絶の数が急増しています。放射能による被曝が胎児に悪い影響を与えるのではないかという不安もあるからです。
【ミンスク遺伝性疾患研究所】
ミンスク遺伝性疾患研究所。ここでは、チェルノブイリ原発事故によって被曝した妊婦の染色体に、どのような変化が起きているのかを調べています。
放射能の汚染地域に住む妊婦2千人以上の血液細胞の染色体を詳しく分析してきました。
【染色体】
その結果、被曝量が高い妊婦ほど染色体の異常の程度が大きいことがわかりました。
染色体には、親から子供へ、生命の情報を伝える遺伝子が乗っています。

【正常 異常】右の染色体の上の部分に、わずかな異常が見られます。もしこの部分の遺伝子の異常が子供に受け継がれると、先天性の障害に繋がる可能性があると、この研究所の専門家は見ています。
【ミンスク遺伝性疾患研究所 ゲナジー・ラジュック所長】
「我々の調査では、妊婦の染色体の異変ばかりでなく、新生児の先天性異常も、汚染の高い地域ほど増えていることがわかりました。その原因としては、ストレスや栄養障害や化学物質による汚染など、様々な複合的要因が考えられます。」
「しかし、それらの中でも一つの大きな要因として、放射能の影響を考えなければならないと思います」
この研究所の調査によると、放射能の高濃度汚染地域では、先天性の異常を持った新生児の数が、事故前の1.8倍に増加しています。
しかし、汚染地域の妊婦の染色体異常と、新生児たちの先天性異常の増加に、因果関係があるかどうかはまだ判っていません。
ラジュック所長は今後、更に詳しい調査と、遺伝子レベルでの研究を進めていかなければならないと考えています。
【チェルノブイリ原発4号炉】
放射能は、人類にとって、未知の部分の多い存在です。チェルノブイリ原発事故によって放出された放射能が、人体にどのような影響を与えているのか、その全容はまだ解明されていません。
キエフ市、トロイシェナ団地。
チェルノブイリ原発のすぐそばにあったプリピャチから避難してきた5千人余りが住んでいます。
ウラジミル・ルキヌさん、47歳。ウラジミルさんは、事故の後、激しい頭痛、心臓や関節の痛みなどが次々とあらわれ、一年半前から仕事が出来なくなってしまいました。
最近では、強い疲労感や脱力感もあり、一日の殆どをベットの中で過ごす毎日です。
ウラジミルさんは、チェルノブイリ原発で働いていました。

【1986年】
事故直後、チェルノブイリ原発の周辺には、ウラジミルさんを含め、大量の事故処理員が動員されました。
飛び散った原子炉の残骸の処理に当たるなど、危険な作業に携わったため、最も深刻な放射能の影響を受けました。
強烈な放射線による急性障害で、半月の間に299人もの人が病院に運び込まれ、そのうち7人が亡くなりました。
最も高い被曝量の作業員は、一般の人の生涯の被曝許容量の10倍以上を、僅か数時間で受けたと推定されています。
処理作業に参加した作業員の数は、80万人以上に上ります。

【妻 タチアナさん ウラジミルさん】
チェルノブイリで事故処理をしたウラジミルさんの身体に、最近新しい異変が起き始めました。記憶力が低下し始めたのです。昔のことはよく覚えているのに、最近起きた出来事や新しいことをすぐ忘れてしまうのです。
妻のタチアナさんは、ベッドに閉じこもりがちなウラジミルさんを外へ連れ出し、記憶力を回復させようと、買い物を手伝ってもらうことにしています。
この日、ウラジミルさんが頼まれたのは、パン、スパゲティ、小麦粉、卵、それにミネラルウォーター2本です。
パンは買いましたが、ミネラルウォーターの代わりに、ジュースを買ってしまいました。
そして、卵と一緒に、頼まれていないマヨネーズまで買いました。
結局、スパゲティと小麦粉は買い忘れてしまいました。
【キエフ脳神経外科研究所】
チェルノブイリ原発事故の処理作業に参加した、80万人以上の事故処理員たちの身体に何が起きているのか。これまでほとんど知られてきませんでした。しかし、最近になって、その人たちの間に深刻な病気が広がっているという実態が明らかになってきました。

ウラジミルさんは、記憶力の低下など、精神的な症状が表れてきたため、専門医に診察してもらうことにしました。
「原発で事故後、どんな仕事をしたのですか?」
「施設の補修や放射能の除去です。柵をつくって囲むとか…。」
「兵隊が埃やチリを取り除いた後、薬品で洗い流す仕事です」
「事故の前も後も4号炉のすぐそばで働いたのですね」
「そうです」
ウラジミルさんは、思い通りに身体を動かすことに不自由を感じるようになってきました。
目を閉じて、自分の鼻先を指で指すという簡単な動作さえ出来にくくなっています。神経系にも異常が出てきたのです。
この患者は、事故の直後、原発内で放射能の測定をしていました。2年前から、幻覚や幻聴に悩まされています。
「光を受けると胸が締め付けられて、とても息苦しくなるんです」
「耳鳴りやチカチカという雑音が聞こえてくることもよくあります」
【キエフ放射線医学研究所】
また、事故処理員たちの間では、治療の難しい、悪性のタイプの白血病が急速に増え始めています。この研究所が健康調査を続けてきた12万人のうち、この2年間に42人の白血病患者が発生しています。
この研究所では、今後、白血病が事故処理員たちの間に更に広がるだろうと予測しています。
【放射線生物物理学研究所「事故処理員の後遺症と将来予測」(1995年)】
ロシア保健省、放射線生物物理学研究所の内部文書。事故後2年の間に参加した事故処理員1886人の健康状態について、8年間追跡調査したものです。
それによると、事故処理員たちの間に、心臓病、精神や神経障害、がんが多発しています。
がんの発病率は一般の人の3倍。4人に1人は、労働不能の状態に陥っています。
そして、30代の人達が、まるで50代のような身体になっていると結論づけています。
この調査では、さらに将来予測を試みています。
その結果、事故のあった年の処理員の100%が、西暦2000年には労働不能状態に陥る。
さらに、その時の平均死亡年齢は、44.5歳になるだろうと報告しています。
【ウラジミル・ルキヌさん(47)】
去年の暮れ、ウラジミルさんと同じ事故処理作業をしていた仲間が脳腫瘍で亡くなりました。ウラジミルさんより5歳も年下の42歳でした。
【妻 タチアナさん】
「上の階に住む25歳の若者が、先日、車に飛び込んで自殺しました。」
「今頃になって性的障害が現れ、夫婦生活が崩壊すると悲観したのです。」
「隣では奥さんがガンで亡くなりました。36歳でした。」
「ご主人はその後、酒びたりとなり、最後には自殺しました」

「神様、夫にこれ以上何も起きませんように」
チェルノブイリ原発事故の直後から始まった住民の移住は、汚染の高い地域を中心に、今も続いています。
しかし、この10年にわたる移住政策は、行政に大きな経済的負担を強いてきました。
事故5年後のソビエト崩壊によって、汚染地域は、ロシア、ウクライナ、ベラルーシの3カ国に分割され、汚染対策の負担を分け合わなければならなくなりました。

中でも、最も大きな負担を抱え込むようになったのが、ベラルーシ共和国です。ベラルーシでは、国土の23%が放射能で汚染され、今も、220万人もの人々が暮らしています。これは、国民の5人に1人の割合です。
【ベラルーシ共和国 ミンスク市】
ベラルーシは、これまで毎年国歌予算の15%以上を、チェルノブイリ対策につぎ込んできました。しかし、政府は悪化する一方の国内経済を理由に、今年から、汚染対策の大幅な見直しを決定しました。
【チェルノブイリ対策省 イワン・ケニク大臣】
「我々は、これまでの移住中心の対策をやめて、汚染地域に住む人たちに、今後とも住み続けてもらうことを考えています。そのためには、汚染された薪や井戸水を使わなくてもよいよう、ガスや水道などの整備をするつもりでいます。」
「このまま対策を続けていったとしても、全ての地域をカバーするには150年もかかってしまうのです。財政状況の悪化から、今まで通り国家予算の15%をつぎ込むことは困難なのです」
ベラルーシ政府の方針転換は、汚染地域に住む人々にとって大きな衝撃となりました。事実上の移住政策の打ち切りは、住民達が汚染地域に住み続けなければならないことを意味しています。
人口1万5千人ほどの、(引用注:ゴメリ州[Gomel also Homiel, Homel]の)チェチェルスク[Chechelsk]地区。

この地区は、自給自足の農村地帯です。
一部の畑は、今でも場所によっては、(引用注:もちろん以前の)東京の15倍以上の放射能で汚染されています。

このため、住民は汚染された畑の作物を食べ、被曝し続けています。
住民たちのもう一つの食料源が、周囲に広がる広大な森です。
しかし、その森は、事故直後、放射能を大量に含んだ雨が降ったため、場所によっては、10年経った今でも、(引用注:昔の)東京の100倍以上の高い放射能で汚染されています。

村の人たちにとって、森は、きのこや木の実、野生動物など、貴重な食料や燃料となる薪を供給してくれる大切な存在です。この村にすむレーナさんの一家も、この日、きのこを採りに森にやってきました。
【レーナ・マラシュケナさん(16)】
16歳のレーナさんは、事故から5年経った頃から、酷い頭痛と疲労感に悩まされ、体調の悪化をうったえています。
この村に住む、唯一の保健婦のゲラシンコさん。村人達の家を巡回しながら健康管理をするのが日課です。
ゲラシンコさんは、今、村人の健康状態が確実に悪化していると感じています。
それは年齢を問わず、村人全般にわたっています。
【保健婦 ワレンティーナ・ゲラシンコさん】
「私は事故の前から、この村の人たちの健康管理をしてきました。しかし、最近の村の人の身体を見て、本当に驚いています。すっかり健康状態が悪くなっているんです。」
「以前は重い病気の人なんてめったに居なかったのに、今では病人のいない家庭はないくらいです。やはり、食べ物による放射能の影響ではないかと思います」
【チェチェルスク地区病院】
チェチェルスク地区の人々の身体には、食品を通して放射能が入り込んでいます。その結果、人体にどのような影響が起きるのか、各国の医学者たちが盛んに現地を訪れ、研究を進めています。
信州大学医学部講師の小池医師たちは、5年前から毎年この地区を訪れ、住民たちの健康診断を続けてきました。
「この人は、確か前に来られた人ですね」
【信州大学 医学部 小池健一講師】
「来なかった?」~返事あって~
「ああそうですね。覚えてます」
住民たちの体内に、放射能がどれだけ蓄積しているかを測定し、健康状態との関係を調べています。
「そうですね、1023マイクロキュリーで37890…(※聞き取れず)、非常に高い値ですね。」
「日本人の25倍くらいの高さですね」
小池医師たちは、特に住民たちの免疫、つまり身体の抵抗力の変化に注目しています。
放射能による長期間の被曝によって、免疫の異常が起き、それが頭痛や疲労感などの症状を引き起こしているのではないかと考えたのです。
【ナチュラルキラー細胞】
血液中の免疫細胞の一つ、ナチュラルキラー細胞の働きを調べました。

汚染されていない地域と比べると、この地区では、正常な免疫機能の範囲から大きく外れる人たちが数多くいることがわかります。
【信州大学 医学部 小池健一講師】
「今までに、ナチュラルキラー細胞の働きが、その、弱くなるということが、どうも白血病の前の段階で見られるという、そういうデータがあります。で すから、あのー、こういうナチュラルキラー細胞に異常が出たような方が、やはり今後、そのー、抵抗力だけではなくて、やはり、がんであるとか白血病である とか、そういうような病気を1人か2人でも出てくるんであれば、やはりこれは、あのー大きな、あのー問題になってくるだろうと思いますね」
免疫の異常は、ウイルスや細菌に対する身体の抵抗力を弱め、様々な病気を誘発します。小池医師たちは、住民たちの健康状態の変化を、将来にわたって見続ける必要があると考えています。
ベラルーシ政府は、水道やガスなどの汚染対策は行う予定ですが、安全な食品の供給までは考えていません。
また、安全な食品は、あっても値段が高いため、チェチェルスク地区の住民たちは、このまま自給自足の生活を続けていかざるを得ないのです。
【レーナさんの姉 アンナさん】
「私たちは国から見放されたんです。」
「汚染された食品を食べ続けてベラルーシが滅んでも、」
「地球全体には何の影響もないでしょう。ひとつの民族が消えたという程度ですよ」
汚染された食品を食べ続けることで、今後、身体に何が起きるのか、住民たちの不安が次第に高まっています。
チェチェルスク地区と同じような生活を強いられている人々は、ベラルーシ全体で35万人にものぼります。
【キエフ脳神経外科研究所】
キエフにある、脳神経外科研究所。
ここでは、重い精神症状に悩む事故処理員500人以上について、検査と治療を続けてきました。 その結果、事故処理員たちの脳に異変が起きていることが明らかになってきました。
「この患者は脳に障害があり、うまく話せません」
「彼は…まだ少ない…これから…たくさんある…まだ少ない…」
「自分ではちゃんと話しているつもりなのです」
「210大隊…苦しい…わからない 何を話せばいい…よくなる」
事故のあった年に、緊急部隊の一員として動員されたこの患者は、相手の言うことは理解できますが、自分で話そうとすると、意図しない言葉が出てしまうのです。
脳は、これまで人間の身体の中で、最も放射線に対する抵抗力が強いと言われてきました。
このため、事故処理員たちに起きている、様々な精神症状の原因は、主にストレスによるもので、脳がチェルノブイリの放射能によってダメージを受けたわけではないとされてきました。
【モスクワ診断外科研究所】
しかし、複数の機関による最新の研究が、その定説を覆そうとしています。
モスクワ診断外科研究所では、精神症状を抱える事故処理員たちの脳の状態を詳しく研究しています。
今、脳の中の、血液の流れを調べています。
これは、上から見た脳の断面です。白い部分は血液の流れが活発です。

この患者は、脳の左側に血液の流れが悪い部分があります。
【放射線医学部 ニーナ・ホロドワ 上級研究員】
「精神症状のある事故処理員の患者、173人を検査したところ、程度の差こそあれ、全員に異常が発見されました。」
「彼らは、脳の血液の流れが悪いだけでなく、神経細胞の働きまでが低下しています」

脳の状態を更に詳しく調べた結果、事故処理員たちの脳に、萎縮が見られることがわかってきました。
写真の白い部分は空洞、灰色の部分には神経細胞が集まっています。

40代後半の、この事故処理員の場合、空洞を表す白い部分が脳の中心に大きく広がり、脳全体が萎縮しています。

同年代の健康な人の脳と比べてみると、神経細胞がつまっている灰色の部分が遥かに少なく、神経細胞が死んでしまったことを示しています。
【キエフ脳神経外科研究所】
神経細胞の死滅は、放射能によって引き起こされたのでしょうか。
キエフ脳神経外科研究所では、放射能による被曝で神経細胞の死滅が起きるかどうか、ラットを使って実験しています。

チェルノブイリ原発事故で放出されたものと同じ種類の放射性物質を餌に混ぜて、ラットに与えます。一ヶ月間、
この餌を食べ続けることで、ラットは、人間に置き換えれば、事故処理員とほぼ同じ量の被曝を受けることになります。
一ヵ月後、ラットの脳の神経細胞にどのような変化が起きているか、顕微鏡で詳しく調べます。

被曝したラットの神経細胞は、輪郭がはっきりせず、ぼやけて見えます。

被曝していないラットと比べて見ると、あきらかな差が見られ、神経細胞が死滅したことを示しています。
【キエフ脳神経外科研究所 アレクサンドル・ビニツキー教授】
「死亡した事故処理員の脳を解剖したところ、放射性物質が蓄積していました。脳は、放射能に対する抵抗力が強いという定説は覆ったのです。」 (引用注:脳には不飽和脂質が多いので、活性酸素に弱い。アルツハイマーやスポンジ脳症も活性酸素の脳内発生が原因だと思われる。そして、放射線は大量の活性酸素を生じさせる)
「脳の破壊が、様々な精神症状や、身体の病気の原因だったのです。」
「作業中に大量に吸い込んだ放射性物質が、脳にまで入り込み、まるで、ミクロの爆弾のように、神経細胞を破壊していったと考えられます」
ビニツキー教授の考えはこうです。
事故処理員達が、作業中に大量に吸い込んだ放射能が、血液によって脳の中にまで運び込まれます。
そして、放射線を周囲の神経細胞に浴びせながら、少しずつ破壊していくのです。
【神経細胞の壊死】

破壊された神経細胞は、元に戻ることはありません。身体の中に入った放射能が多いほど、脳の破壊が進み、やがて脳の機能が失われていきます。
脳の最も外側が破壊されると、知的な作業が出来なくなったり、記憶力が低下します。

特に影響を受けやすいのは、視床下部や脳幹など中心部で、ここが破壊されると、食欲や性欲が失われたり、疲労感や脱力感に見舞われます。
また、内臓の働きが悪くなったり、手や足の動きを上手くコントロール出来なくなるなど、身体全体に影響が出ます。いずれも事故処理員によくある症状です。
この冬、ウラジミルさんの病状は、更に悪化していました。簡単な計算も間違えるようになり、1人では買い物も出来なくなってしまいました。
ウラジミルさんは、再び脳の専門病院を訪ね、詳しい検査を受けることになりました。
脳の状態に問題はないのか。MRIという画像診断装置を使って、詳しい検査を受けます。

その結果、脳に異常が発見されました。

前頭葉と呼ばれる、脳の前の部分に白い塊があります。神経細胞が死滅したあとです。前頭葉は、計算や思考など、創造的な働きを担う中枢です。ウラジミルさんの知的障害の原因は、ここにあるのではないかと医師たちは考えています。
脳の更に深い部分にも、神経細胞が死滅したあとがありました。ウラジミルさんの疲労感や脱力感の原因は、これではないかと診断されました。
「検査の結果、ご主人の脳に異常が発見されました。」
「一連の症状がチェルノブイリ事故の後、始まったことを考えれば、」
「放射能の影響とみるべきでしょう。」
「放射能が脳の中に入り込み、脳を破壊していったのです。」
「簡単に治せるものではありません。あんな大きな病巣がありながら、」
「大事に至らなかったのが不思議なくらいです。」
「もっと拡大していたら助からなかったでしょう」
「気を落とさないでください」
「大丈夫です。涙を見せたら夫にショックを与えてしまいます」

チェルノブイリの放射能が、10年もの間、ウラジミルさんの脳を、少しずつ確実に破壊していたのです。
妻のタチアナさんは、診断の結果を夫に告げず、残された身体の機能を出来るだけ維持していく生活をしようと決意しました。
最近、チェルノブイリ原発事故による、人体への汚染について、またひとつ、新しい事実が発見されました。

汚染が5キュリー以下で、人体への影響が比較的少ないとされてきた黄色の地域に、赤の高濃度汚染地域に匹敵する人体汚染が起きていることが分かったのです。

チェルノブイリ原発の西。【ポレーシア地方】ベラルーシとウクライナの国境沿いに広がるポレーシア地方は、プリピャチ川沿いに開け、広大な森と豊かな水に恵まれた農村地域です。

【ゼルジンスク村】ポレーシア地方にある、人口1000人足らずの村、ゼルジンスクに、事故後初めて検診車がやってきました。
汚染の高い地域から巡回してきたため、この村の人々は、事故後10年目にしてようやく検診を受けることになったのです。その結果、意外な事実が明らかになりました。

ゼルジンスク村の人々の体内に蓄積された放射能の量が、極めて高かったのです。
【ゴメリ特別病院検診部 ナターシャ・ジノビッチ婦長】
「驚きましたよ。例外なく皆被曝量が高いのですから。」
「ここは土地の汚染が低い地域のはずなのに、住民の被曝量は最も汚染の高い地域と変わらないのです。どうしてこのような高い数値が出たのか、よくわかりません」
なぜ、この村の人たちの体内に、多くの放射能が蓄積されたのでしょうか。
その原因を突き止めるため、ベラルーシ国立土壌研究所のグループが調査を続けています。
その結果、原因解明の鍵は、土にあるのではないかと見ています。一般に、土に含まれる粘土分は、放射能を取り込んで、外に逃がさない性質を持っています。
ところが、この村の土には粘土分が少なく、ほとんどが粒子の粗い泥炭です。
このため、放射能が植物に急速に吸収されやすいというのです。
【ベラルーシ国立土壌研究所】
実際に、ゼルジンスク村の土の放射能を測定してみました。
結果は、1068ベクレル。汚染は、それほど高くありません。
しかし、牧草の放射能は、土の15倍、15544ベクレルにも及んでいます。
この村では、放射能が、土よりも牧草に大量に蓄積されていました。その結果、この村に降り注いだ放射能は、土から牧草へ、そして牧草から牛へ、
さらにその牛が出す牛乳から人間へと、次々と濃縮されていったのです。
ゼルジンスク村の人々は、汚染の高い地域と同じレベルの被曝を、この10年間受け続けていたのです。
調査の結果、この村と同じ性質の土がポレーシア地方全体に広がり、およそ1万平方キロ、チェルノブイリ原発事故による全ての汚染地域の1割近くに達することが分かりました。
ベラルーシ国立土壌研究所のグループは、人体への影響という視点から見たとき、放射能汚染地図が大きく書き換えられることになると警告しています。
チェルノブイリ原発事故から10年。新しい放射能汚染の姿が見え始めています。放射能が人体に何を引き起こすのか、その実態の解明は、まだ始まったばかりです。【終わりなき人体汚染 ~チェルノブイリ事故から10年~】
(文字おこし、完)
このエントリーは有志の方にお手伝いいただきました。ありがとうございました。
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危険地域から避難できれば一番いいのですが、どこにいたとしても、なるべく汚染されていない食事を摂ることと、早めにそして持続的に抗酸化剤を摂っておくことが防御になります。